M&Aの方法とは?手法や流れなどマニュアルを解説

M&Aとは「合併と買収」のことを指しますが、手法は多岐にわたります。

目的に応じたM&Aを行なうために、それぞれの手法の特徴を把握しておく必要があるでしょう。

この記事では、手法ごとの特徴やM&Aの流れなど、M&Aを行なう方法をご紹介します。

1.M&Aの手法の分類

  • 資本提携:合併・買収・合併会社設立・資本参加
  • 業務提携:生産提携・販売提携・技術提携

資本提携

まず資本提携とは、一方が他方の株式を取得する、またお互いが相手の会社の株を持ちあい、独立性を保ちながら関係を強化することを指します。

合併

合併とは2つ以上の企業が契約により1つの企業に統合される法的な手続きのことをいいます。

合併では、買われる会社が消滅する(消滅会社ともいいます)ことに対し、買収では被買収会社は存続する違いがあります。

後述しますが、合併の種類として吸収合併と新設合併があります。

買収

買収とは、大きく言えば株式取得という株式を取得する方法と、事業を取得する事業譲渡、会社分割に分かれています。

M&Aの手法の中でよく行われているのは9割ほどが株式取得で、その残りは事業譲渡がほとんどの割合となっています。

そのため、株式取得と事業譲渡の違いを把握しておくといいでしょう。

分割

分割とは、自社の中で1つ以上の事業を新設もしくは吸収する形で分割する手法のことを言います。

新設分割

新設分割とは、自社の中で事業を分割し、新しい会社として設立する形で事業の分割を行なう手法です。

吸収分割

吸収分割とは、自社の事業の中で分割する事業が、事業を展開している企業に吸収される形で事業の分割を行なう手法です。

業務提携

業務提携は資本提携とは違い、資本の提供はせず、業務を提携する企業と協力して事業を行なうことを指します。

業務の分野は生産・販売・技術に分けられます。

生産提携

生産提携とは、業務提携の中で精算に関する業務を提携します。

業務を任せる委託とは違い、生産提携の場合は生産に関してお互いの企業が協力します。

販売提携

販売提携とは、業務提携の中で販売に関する業務を提携します。

販売提携を行なう企業が持つ販売ルートや店舗を活用し、お互いに経済的な利益があると考えられる際に提携されます。

技術提携

技術提携とは、業務提携の中で技術に関する業務を提携します。

商品開発などを行なう際に、自社の技術だけではなく技術提携をしている企業の技術力を取り入れることでサービスや商品開発に役立てます。

2.M&Aの手法【合併と買収】

合併

合併の手法である吸収合併と新設合併についてご紹介します。

吸収合併

吸収合併とは、吸収合併を行なう企業が存続し、吸収される企業は合併後消滅します。

吸収された企業の株主は吸収した企業の株主となり、吸収された企業の権利を吸収した企業が取得します。

対価は株式で払えばいいため、特別資金を用意する必要はありません。

新設合併

新設合併とは、合併する2つの企業の事業で新しい会社を新設し、その新会社に統合する手法です。

新設合併の場合、合併する2つの企業が消滅し、新設した会社が存続します。

しかし、この方法は手続等が複雑で手間と時間がかかるため、あまり選ばれていません。

買収

買収の手法である株式取得と事業譲渡についてご紹介します。

株式取得

  • 株式譲渡

株式譲渡とは、売り手側が保有している株式を買い手側に譲渡する代わりに、現金を受け取る手法です。

M&Aによって株を取得した買い手側は売り手側の経営権を取得します。

株式譲渡は手続きが容易であり、スピーディーにM&Aを行なうことができ、被買収企業が所有している資産などをそのまま取り込むことができるメリットがあります。

被買収企業が保有している負債を引き受けてしまうリスクがあり、買収の際に資金が必要となるデメリットがあります。

  • 株式交換

株式交換とは、買い手側が新株式もしくは自社の株式を交付し、売り手側は自社の株式を譲渡することでお互いの株式を交換します。

これによって、売り手側の株主は買い手側の株主となります。

特徴として、株主の賛成が得られない場合などでもスクイーズアウト(強制取得手続)を行なうことができます。

一方で、株式譲渡よりは手続きが複雑で手間を要することや、子会社となる売り手側の債権をも引き継がなければならないこと、支払いの必要は無いため現金を得ることはできない点があります。

  • 第三者割当増資

第三者割当増資とは、売り手側が新株式を発行するか、売り手側の株式を買い手側に交付することで、買い手側に代金をもらうことができます。

売り手側は資金を得ることができ、売り手側の株主はそのまま売り手側の株主として存続します。

この場合、株式の取得割合が50%を超えれば、買い手側は売り手側の経営権をもらうことができます。

第三者割当増資の特徴として、手続きが容易で手間が少なくM&Aを進めることができることや、買い手が売り手の株式を買収するための資金が必要になることです。

事業譲渡

事業譲渡とは、売り手側の事業のうちいくつかを買い手に売却する手法です。

買い手は売り手が持つ事業を買収する際に代金を支払います。

事業譲渡の特徴として、買収したい一部の事業のみを買収することができるため、負債を引き受ける必要はありません。

しかし、買収する事業に対して個別に手続きが必要となり、手続きに手間がかかることです。

3.税金

取り扱われることの多い株式譲渡・事業譲渡でご紹介します。

株式譲渡 売り手の個人株主 株式の譲渡所得×20.315%

(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)

売り手の法人株主 株式の譲渡所得×(30~40%)

(法人税率)

事業譲渡 ①法人税(売り手)

事業の譲渡所得×(30~40%)

②消費税(買い手)

課税対象の譲渡価格×消費税

M&Aを行なった際にも税金は発生します。

株式譲渡

株式譲渡で課税される対象となるのは、売却代金を受け取った売り手側の株主です。

この株主が個人か法人かでも税率は変わります。

個人株主であれば、株式を売却したことで得た利益に対して所得税(15%)・復興特別所得税(0.315%)・住民税(5%)を合わせた20.315%が課せられます。

法人株主の場合は株式売却による利益に法人税が課せられます。

事業譲渡

事業譲渡で課税される対象となるのは、売り手企業は法人税を、買い手企業は消費税が課せられます。

この場合は株主に税負担はありません。

注意したいのは、事業譲渡で得た資金を社長個人で受け取る場合や、退職金として受け取る場合は、別途課税される可能性があります。

 

税金の支払い時期は、M&A成立後の確定申告のタイミングで支払うことになります。

4.M&Aの流れ【フロー】

①事前準備

②アドバイザー選定

③候補選定

④秘密保持契約

⑤IM提示

⑥トップ面談

⑦基本合意契約締結

⑧デューデリジェンス

⑨条件交渉

⑩最終契約

⑪PMIの実施

以下ではM&Aのフローについてご紹介します。

①事前準備

M&Aが経営課題の解決に適しているのかを改めて考え直す期間になります。

M&Aによって目標とする目的は何なのかを明瞭化します。

②アドバイザー選定

M&Aによる目的を明瞭化させたらM&Aアドバイザーを選定する項目に入ります。

アドバイザーはM&A仲介会社から選定することが一般的です。

M&Aに対して専門的な知識やノウハウを有し、経営に対してアドバイスができる存在はかなり重要となります。

M&Aのアドバイザーを選定した後は、FA契約を締結して本格的にM&Aアドバイザーとして就任することになります。

③候補選定

買収する企業の候補先を選定します。

この際に、売却側の企業にM&Aを行なう意思があるのか問う項目となります。

この場合は、まだ会社名などの詳細は明かされていない状態でアプローチを行ないます。

④秘密保持契約

候補先の企業を選定した後は、秘密保持契約を締結します。

M&Aは従業員の待遇や勤務内容など、取引先への取引内容などに影響を与える可能性があり、簡単な経営戦略ではありません。

そのため、買い手企業だけでなく、売り手企業の機密情報を守るために秘密保持契約を結びます。

⑤IM提示

IMとは、インフォメーション・メモランダム(Information Memorandum)のことで、売却対象となる企業の企業や事業に対する情報が詳細に記載された資料のことを言います。

⑥トップ面談

IMをもとにM&Aの条件について社内検討をした後は、買い手と売り手のトップ面談となります。

M&Aの条件に付いて話し合った後に、M&Aを実施する意思が固まったタイミングで行なわれることが一般的です。

⑦基本合意契約締結

M&Aについてお互いの同意が得られた後は、基本合意契約を締結します。

基本合意書にはM&Aの手法であるスキームや買収価格などが記載されています。

この時点での基本合意書には法的拘束力がない場合がほとんどですが、簡単にキャンセルされないために交わします。

⑧デューデリジェンス

デューデリジェンスとは企業監査のことで、買い手が売り手に行うことが一般的です。

買収するにあたって、買収価格は適切なのか、財務状況や人事などあらゆる面から調査を行ないます。

後に発覚する可能性のある簿外責務が無いかについても、綿密なデューデリジェンスによってリスクを減らすことができます。

⑨条件交渉

デューデリジェンスで得た情報からM&Aの正式な条件を交渉します。

お互いの利益となるように、意見を尊重しつつ交渉を行ないます。

⑩最終契約

条件交渉によって正式な条件が決定すれば、最終譲渡契約を締結します。

最終譲渡契約により法的な拘束力を持ち、M&Aを締結させます。

⑪PMIの実施

最終譲渡契約を締結した後は、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション:Post Merger Integration)を実施します。

買い手企業と売り手企業の経営統合・業務統合・意識統合を行なう過程です。

統合が上手くいかなければ期待したシナジー効果も生まれず、M&Aが成功するか失敗するかは統合をしっかりと実施していたかどうかでも変わるような重要なプロセスとなります。

 

M&Aを行なうには、まずはどのような目的があるのかを明瞭化させる必要があります。

M&Aには様々な手法がありますが、自身に合ったM&Aを行なうためには専門家の知識やノウハウが必要不可欠です。

気になっている方は一度検討してみてはいかがでしょうか。

5.M&Aの方法を把握してM&Aを視野に入れてみては

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